お知らせ

「夜ふけに二度ばかり、雪が落ちる音を聞いた」

1月に刊行された池内紀さんの著書「湯けむり行脚」に当館の記述があります。お泊まりになったのは21年前、西山温泉に嫁いで初めての冬でした。あまりの雪にびっくり、女将の仕事に四苦八苦、子育てに疲労困憊、という状況だった私。
その時は池内さんのお名前も著名なドイツ文学者ということもつゆ知らず、お部屋のテーブルに開いてあった難しそうなドイツ語の本を見て「こんなのを読めるなんてすごいなぁ」と思ったのを覚えています。
「湯けむり行脚」はあとがきにあるように、バブル期の波にのまれず昔ながらの湯治場の雰囲気を残した宿、湯の神がいるところを巡った体験記です。
当時は私自身、その良さを分かっていませんでした。今は一度失ったら二度と取り戻せないものがあること、現代のやり方を採り入れつつそれらを残していくこと、を考えながら宿を守っています。